メモ 3
まだ主の目覚めない屋敷で気まぐれに行われる、ピアノのレッスン。
講師はR・ドロシー・ウェインライト、生徒は成歩堂龍一。
メモ 2
雲間から漏れるぼんやりとした朝の光が広いホールに注がれている。
その中にぽつんと黒く浮き上がるグランドピアノは、まるでおもちゃのように見える。
ゆっくりと時間をかけてそこまでたどり着き、蓋を開けようと触れたところに、くっきりと自分の指紋が付いた。
「……」
しかしためらうこと無く、そのまま指先に力を込めて重い蓋を持ち上げる。
蓋の中身はつやつやと柔和な光を放ち、使い込まれていること、手入れが行き届いていることを主張している。
それにも構わず、人差し指で適当な鍵盤を無造作に弾く。
――――
静かな邸内に、ハンマーが弦を叩いた反響が染み渡っていく。
「…まいったなあ」
椅子に腰を下ろしながら、成歩堂はニット帽ごと頭をさする。
「これ、後ろの蓋って開けた方が良いのかな…」
しばらくぼんやりと、ホールに残る残響に耳を澄ませてから、成歩堂はいきなりそれを開始した。