2011-01-01から1年間の記事一覧

おばあちゃんのおもいで

サロメへ。

髪型の謎を本当に追え!

旅人風の男が、ビネ・デル・ゼクセの町はずれをひとり、慣れた足取りで歩いている。

髪型の謎を追え!

普段通りの午前中。あてがわれた執務室で、サロメはいつも通り、書類の決裁に追われていた。

節分家族6

いつも通りの朝。 目が覚めて、カーテンの隙間から差し込む光にしみじみと季節を感じたりしながら、まだ鳴る前の目覚ましを止めておく。 「おや?」 いつも目覚ましが鳴る前に目を覚ますイワンだが、今日はいつもよりもやや早く目覚めたようだ。

節分家族5

「呉君、お父様が職員室にいらっしゃっているよ」 学年主任の中条が授業中の呉の教室に入って来ると、そう言って呉を連れ出した。大人の早足に必死でついて行きながら、彼はサングラスで表情のよく分からない中条の顔を見上げた。中条はそれ以上何も呉に話し…

節分家族4

あまり広くもない庭の端から端まで一気に駆け抜けて、幽鬼に向かって斬りかかる。常人では自分に何が起こったのか理解できぬうちに、頭から両断されてしまっているだろう必殺の一太刀を、肩こりを気にして首をかしげる位のまったく緊張感のない動作で、至極…

節分家族3(番外編)

雪どけを間近に控え、雪を薄く肩に乗せた木々の新芽も控えめに膨らんできている。しんと冷えた空気を胸一杯に吸うと、そんな木々のさわやかな息づかいをじかに感じるようだ。 狭い山道を、2人並んでよけいに狭くしながら、旅の2人連れが歩いている。

節分家族2

パチリ。 と、まぶたを開く。 気づくと、ベッドから身を起こしていた。時計を見ると、いつも起きる時間の1時間前。 と、いうことは。 ようやくヒィッツカラルドは意識がはっきりした。 アルベルトが帰宅しているのだ。

節分家族1

…カタタン………タタン……。 かすかに電車の走る音が聞こえてくる、そんなひっそりとした帰路をイワンは一人歩いていた。 いつもの通勤鞄に、左手には深夜まで営業しているスーパーのビニール袋。買い物と言うにはささやかなその中身は、から煎りした豆。 今日は…

ポメラの来た日 9

ガラガラ、と乱暴に玄関の戸口の開く音。ニケアあたりが帰ってきたのか、とワシールが顔をのぞかせると、そこにいたのはレルカーの住民ではなかった。 「…これは、ザムザくん。いらっしゃい」 「うむ。オロクはいるかな?」

I.G.A.夜の部

カタリ。 グラスの中の氷が静かに揺れて音を立てた。その音を愉しむように一口、口に含む。 「ふむ…」 満足げに目を閉じる。店内には静かにピアノが流れている。 ADIEU。クセのない、控えめの演奏はこの狭い店に良く似合っていた。

おふたりさん B

その2人が対峙するのは今回が初めてというわけではなく、その度に、壮絶な死闘が交わされてきた。 そして今回も。 アルベルトと戴宗。 周囲に彼ら以外の人間はいない。アルベルトの相手が出来るのは、その場に戴宗しかいなかったからだ。そして、戴宗の相手…

おふたりさん A

「青面獣、お主せめてもう一枚、中に着たらどうだ」 突然そのようなことを一清に切り出されて、揚志は声を上げて笑った。

星をみるひと

ラッキィ・スタアから珍客が来たらしい。 なんとなく思い当たって、カーンが1件の宿屋に顔を出してみると、懐かしいズルズルした服装の男が見えた。

ザムはげさん

いつもの悪ガキたちにからかわれたりムキになって相手をしたり、言ってみれば、だいたいいつも通りの昼下がりが過ぎて、ザムザは噴水の側のベンチにやれやれと腰を下ろした。

天より他に知る者もなく

それは穏やかな陽気がしばらくつづいていた頃のこと。差出人のない手紙がザムザの元に届いた。

いつかの月

カクの村より東のさらに小さな村の夜空に、大きな月が昇っていた。 村の民家を間借りしてようやく一晩の宿を得たビクトールは、それをボンヤリ眺めている。

夜の散歩

1 たいまつのはぜる音にあわせて、自分の影が自分の意志とは無関係に踊る様子がどうにも心許なさをあおる。明かりはむしろ陰影を作り出し、その影の濃さを際だたせる。それらはまるで石壁の隙間から止めどなくにじみ出してくるかのようだ。 嫌な考えになっ…

未知への挑戦 3

扉を開けると、パーンがいた。

未知への挑戦 2

洗濯場の一角を借りて鎧を洗うクレオとクワンダ。その傍らを過ぎていく人々は、彼らを盗み見るように伺いはしても、声をかけようとはしない。いや、声をかける者もいるのだが、何かを言いかけるようにして、何も言い出せずにその場をそそくさと立ち去ってし…

ポメラの来た日 8

しとしとしとしとしとしとしと、雨は止みそうで止まない。子供たちが学校から帰ってくるにはもう少し。路地はつかの間、穏やかな静寂の中。 ザハークは窓際にミニちゃぶ台を移動させて、ポメラを開いたまま、のんびり外の様子を眺めている。

ポメラの来た日 7

オロクさんがようやっとダメージから復活して、突っ伏していた上体を起こすと、いかにもこちらに声をかけたものかという案配で、ルセリナが心配そうに伺っているのと目があった。

ポメラの来た日 6

電車から降りると、どんよりしていた雲からついに雨粒が落ち始めてきたようだった。 「あー、やっぱり傘持ってくるんだった…!」 レルカーまでこのまま歩いて帰る気にもならず、ニケアはとりあえず駅前のファーストフード店に入る。 (誰か通りがからないか…

ポメラの来た日 5

ベランダに出た彼は、こちらを振り向くとやたら晴れやかに笑った。 「何度みてもここからの眺めは良いな」 妙なことを言うものだ。

やっぱり劇が好き

1 ゲドは今日も劇場に来ていた。