オロク

ポメラの来た日 10

その日、ザハークがレルカーに通うようになって、はじめてまともに、オロクから頼みごとをされた。

ポメラの来た日 9

ガラガラ、と乱暴に玄関の戸口の開く音。ニケアあたりが帰ってきたのか、とワシールが顔をのぞかせると、そこにいたのはレルカーの住民ではなかった。 「…これは、ザムザくん。いらっしゃい」 「うむ。オロクはいるかな?」

ポメラの来た日 8

しとしとしとしとしとしとしと、雨は止みそうで止まない。子供たちが学校から帰ってくるにはもう少し。路地はつかの間、穏やかな静寂の中。 ザハークは窓際にミニちゃぶ台を移動させて、ポメラを開いたまま、のんびり外の様子を眺めている。

ポメラの来た日 7

オロクさんがようやっとダメージから復活して、突っ伏していた上体を起こすと、いかにもこちらに声をかけたものかという案配で、ルセリナが心配そうに伺っているのと目があった。

ポメラの来た日 6

電車から降りると、どんよりしていた雲からついに雨粒が落ち始めてきたようだった。 「あー、やっぱり傘持ってくるんだった…!」 レルカーまでこのまま歩いて帰る気にもならず、ニケアはとりあえず駅前のファーストフード店に入る。 (誰か通りがからないか…

ポメラの来た日 5

ベランダに出た彼は、こちらを振り向くとやたら晴れやかに笑った。 「何度みてもここからの眺めは良いな」 妙なことを言うものだ。

間食

すたすた、とあまり遠慮を感じない足音がこちらに近づいてくるのを背中に聞いて、ニケアはちょっとだけ気が重くなった。 (あの人、苦手なんだよね…) 偉そうだし。 時々見ていられないようなことがあっても、全然平気そうにしていたり。そういうところもす…

帰り道

はずかしいピンクの3輪自転車に、くくりつけられたやはりピンク色の荷台。どういう意味か分からないが殴りかかれている「069」の数字。 そして、何故かがんじがらめに縛り上げられて荷台に載せられているオロク。 3輪自転車を楽しそうに漕いでいるワシ…

寄り道

「これでは、たいした金額にもならぬな」 たくましい眉を器用に持ち上げて、アズラット老人は断言した。 「なんだと?」 苦労してレルカーから運んできた本の山を背に、オロクは憮然と問い返した。

ポメラが来た日 2

雪かき日和 その年の年末は、珍しく雪が降った。そのタイミングで降らなくてもよいだろうに、というタイミングで。

ポメラが来た日 1

狭い歩道に積み上がったケース入りのニンジンやらダイコンやら、それをあれこれと吟味する年季の入った主婦だとか、それらを避けて走る自転車だとかとすれ違いながら歩くのは、なかなか容易なことではない。