2011-08-01から1ヶ月間の記事一覧
サロメへ。
旅人風の男が、ビネ・デル・ゼクセの町はずれをひとり、慣れた足取りで歩いている。
普段通りの午前中。あてがわれた執務室で、サロメはいつも通り、書類の決裁に追われていた。
いつも通りの朝。 目が覚めて、カーテンの隙間から差し込む光にしみじみと季節を感じたりしながら、まだ鳴る前の目覚ましを止めておく。 「おや?」 いつも目覚ましが鳴る前に目を覚ますイワンだが、今日はいつもよりもやや早く目覚めたようだ。
「呉君、お父様が職員室にいらっしゃっているよ」 学年主任の中条が授業中の呉の教室に入って来ると、そう言って呉を連れ出した。大人の早足に必死でついて行きながら、彼はサングラスで表情のよく分からない中条の顔を見上げた。中条はそれ以上何も呉に話し…
あまり広くもない庭の端から端まで一気に駆け抜けて、幽鬼に向かって斬りかかる。常人では自分に何が起こったのか理解できぬうちに、頭から両断されてしまっているだろう必殺の一太刀を、肩こりを気にして首をかしげる位のまったく緊張感のない動作で、至極…
雪どけを間近に控え、雪を薄く肩に乗せた木々の新芽も控えめに膨らんできている。しんと冷えた空気を胸一杯に吸うと、そんな木々のさわやかな息づかいをじかに感じるようだ。 狭い山道を、2人並んでよけいに狭くしながら、旅の2人連れが歩いている。
パチリ。 と、まぶたを開く。 気づくと、ベッドから身を起こしていた。時計を見ると、いつも起きる時間の1時間前。 と、いうことは。 ようやくヒィッツカラルドは意識がはっきりした。 アルベルトが帰宅しているのだ。
…カタタン………タタン……。 かすかに電車の走る音が聞こえてくる、そんなひっそりとした帰路をイワンは一人歩いていた。 いつもの通勤鞄に、左手には深夜まで営業しているスーパーのビニール袋。買い物と言うにはささやかなその中身は、から煎りした豆。 今日は…