樊瑞

節分家族5

「呉君、お父様が職員室にいらっしゃっているよ」 学年主任の中条が授業中の呉の教室に入って来ると、そう言って呉を連れ出した。大人の早足に必死でついて行きながら、彼はサングラスで表情のよく分からない中条の顔を見上げた。中条はそれ以上何も呉に話し…

I.G.A.夜の部

カタリ。 グラスの中の氷が静かに揺れて音を立てた。その音を愉しむように一口、口に含む。 「ふむ…」 満足げに目を閉じる。店内には静かにピアノが流れている。 ADIEU。クセのない、控えめの演奏はこの狭い店に良く似合っていた。