ジャイアントロボ

節分家族6

いつも通りの朝。 目が覚めて、カーテンの隙間から差し込む光にしみじみと季節を感じたりしながら、まだ鳴る前の目覚ましを止めておく。 「おや?」 いつも目覚ましが鳴る前に目を覚ますイワンだが、今日はいつもよりもやや早く目覚めたようだ。

節分家族5

「呉君、お父様が職員室にいらっしゃっているよ」 学年主任の中条が授業中の呉の教室に入って来ると、そう言って呉を連れ出した。大人の早足に必死でついて行きながら、彼はサングラスで表情のよく分からない中条の顔を見上げた。中条はそれ以上何も呉に話し…

節分家族4

あまり広くもない庭の端から端まで一気に駆け抜けて、幽鬼に向かって斬りかかる。常人では自分に何が起こったのか理解できぬうちに、頭から両断されてしまっているだろう必殺の一太刀を、肩こりを気にして首をかしげる位のまったく緊張感のない動作で、至極…

節分家族3(番外編)

雪どけを間近に控え、雪を薄く肩に乗せた木々の新芽も控えめに膨らんできている。しんと冷えた空気を胸一杯に吸うと、そんな木々のさわやかな息づかいをじかに感じるようだ。 狭い山道を、2人並んでよけいに狭くしながら、旅の2人連れが歩いている。

節分家族2

パチリ。 と、まぶたを開く。 気づくと、ベッドから身を起こしていた。時計を見ると、いつも起きる時間の1時間前。 と、いうことは。 ようやくヒィッツカラルドは意識がはっきりした。 アルベルトが帰宅しているのだ。

節分家族1

…カタタン………タタン……。 かすかに電車の走る音が聞こえてくる、そんなひっそりとした帰路をイワンは一人歩いていた。 いつもの通勤鞄に、左手には深夜まで営業しているスーパーのビニール袋。買い物と言うにはささやかなその中身は、から煎りした豆。 今日は…

I.G.A.夜の部

カタリ。 グラスの中の氷が静かに揺れて音を立てた。その音を愉しむように一口、口に含む。 「ふむ…」 満足げに目を閉じる。店内には静かにピアノが流れている。 ADIEU。クセのない、控えめの演奏はこの狭い店に良く似合っていた。

おふたりさん B

その2人が対峙するのは今回が初めてというわけではなく、その度に、壮絶な死闘が交わされてきた。 そして今回も。 アルベルトと戴宗。 周囲に彼ら以外の人間はいない。アルベルトの相手が出来るのは、その場に戴宗しかいなかったからだ。そして、戴宗の相手…

おふたりさん A

「青面獣、お主せめてもう一枚、中に着たらどうだ」 突然そのようなことを一清に切り出されて、揚志は声を上げて笑った。