カクの村より東のさらに小さな村の夜空に、大きな月が昇っていた。 村の民家を間借りしてようやく一晩の宿を得たビクトールは、それをボンヤリ眺めている。
1 たいまつのはぜる音にあわせて、自分の影が自分の意志とは無関係に踊る様子がどうにも心許なさをあおる。明かりはむしろ陰影を作り出し、その影の濃さを際だたせる。それらはまるで石壁の隙間から止めどなくにじみ出してくるかのようだ。 嫌な考えになっ…
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