カーン

星をみるひと

ラッキィ・スタアから珍客が来たらしい。 なんとなく思い当たって、カーンが1件の宿屋に顔を出してみると、懐かしいズルズルした服装の男が見えた。

夜の散歩

1 たいまつのはぜる音にあわせて、自分の影が自分の意志とは無関係に踊る様子がどうにも心許なさをあおる。明かりはむしろ陰影を作り出し、その影の濃さを際だたせる。それらはまるで石壁の隙間から止めどなくにじみ出してくるかのようだ。 嫌な考えになっ…

昼寝

厳しい寒さも束の間にゆるみ、正午を過ぎた辺りになると日差しは日を追う事に暖かくなってきた。食後の小休止、とばかりに、芝生のそこここに気持ちよさそうに寝ころび午睡をむさぼっている者も見受けられる。 その男も、気持ちよさそうに木陰の良い位置を占…

これまで

不思議なことに、坑道の中は真っ暗ではない。どういう理由かは分からないが、壁や天井の所々に淡く光る部分があり、まるで星空の中に落ちたみたいだ。 その輝きに夢中になり、坑道に入っていった当初の怒りも忘れ、気が付いたらずいぶんと奥まで入り込んでい…

これから

穏やかな天気ながら、上空は風が強いらしく、小さな雲がやや足早に流れていく。遠くに大きな雲の固まりが見えるが、今日中はこの青空は持つだろう。 流れていく雲を目線で追いかけながらそのような事を考えていたためか、その人物の接近にセシルが気づいた時…